Top WORKS U社山梨県商業施設
Works

U社山梨県商業施設

大手GMSチェーンからご依頼をうけた地域密着型大型ショッピングモールの大規模リニューアル。
ここは雄大な富士山を拝める風光明媚な盆地である。
しかしそれがゆえの囲まれたエリア内で、地域密着型店舗同士が激しくしのぎを削り合っている。
コロナパンデミック以降、次々に変わりゆく世界に翻弄される形で、物販店は需要の急激な変化への対応を強いられている。
地元に根付いたローカルスーパーなどに比べて、大型ショッピングモールは柔軟な変容が取りにくいことは容易に想像がつく。

バリアフリーとインクルーシブデザイン

大規模建築物での「インクルーシブデザイン」という言葉を耳にするようになってきた。
平成6年に高齢者や障害者の自立と積極的な社会参加を促す目的でハートビル法が制定、平成18年に今のバリアフリー新法として改正施行され、私たち建築士は「バリアフリーデザイン」を合言葉に建築設計を行ってきた。
その後「ユニバーサルデザイン」へ考え方が昇華したが、今度は健常者が弱者の設備まで自分本位に使いだしてしまった。そこで出てきたのが、あらゆる人それぞれの立場に立って、
意見を取り入れて創っていく「インクルーシブデザイン」だ。

この大型モールには授乳室が複数ある。バリアフリー法に基づく各自治体条例には差があるものの、授乳室の詳細な施設基準を定めていく動きがある。そこで今回の改装に当たり、私たちは2種類の授乳室を考えた。
ひとつは「閉じた授乳室」、もう一つは「開いた授乳室」だ。
両方ともママだけでなく、パパ、爺や婆や、色んなファミリーが入ってくることを想定し、みんなから意見を聞いたインクルーシブな空間だ。もちろん私たちは「設計BIM」を用いてみんなが分かり易い設計提案も行っている。
「開いた授乳室」は中央を衝撃吸収床とし、大人たちがそれを囲み談笑しながら中央で遊ぶ乳児たちを見守る。公園の砂場のイメージだ。授乳ブースは鍵こそ無いものの二重のカーテンで仕切られ、中はホテルラウンジのように上質なソファ空間が広がる。
「閉じた授乳室」「開いた授乳室」いずれも動線や視線をコントロールしてあるので、様々な人が混在しても覗きなどの心配もなく、育児で大変なママやパパ、ファミリーがほっとできる新たな空間の提案だ。

  • ベビーケアルーム

    「開いた授乳室」子育て中のママ建築士による当初コンセプトスケッチどおりに仕上がった。閉鎖空間が怖いママもこれなら安心。

  • ベビーケアルーム

    キッズトイレコーナーも視線コントロールで開かれた安全な空間。

  • ベビーケアルーム

    楽しく温かい雰囲気の開いたキッズトイレは、子供たちの不安感をも取り払ってくれる。

  • ベビーケアルーム

           従前の「ザ・授乳室」

  • ベビーケアルーム

    「閉じた授乳室」ファミリーはオムツ交換ゾーンまで、奥の授乳ゾーンへは心理的に入りにくい。

  • ベビーケアルーム

    「閉じた授乳室」奥の授乳ゾーンは待ちスペースと更に鍵付き戸で仕切ってある。落ち着いた色調によるくつろげる空間だ。

  • インクルーシブサイン

    ユニバーサルを超えインクルーシブデザインへ。 環境デザイン:(株)ホログラム

  • インクルーシブサイン

    インクルーシブなデザインを考えている。 環境デザイン:(株)ホログラム

世代混在と価値基準の移り変わり

コロナパンデミックから3年、世界はそれまで以上に大きく変遷してきた。
エネルギー大国に翻弄されながら戦争を片目に消費を続ける人々、それを追いかける新しい消耗品が猛烈なスピードで次々と生まれてはあっという間に消えていく。
私たちはコロナウィルスによって「生きる」ということを嫌というほど意識させられている。
それなのに消費し続ける(消耗し続ける)ことへ人類はどうアプローチしていくのか。
そしてあと3年もすると2025年を迎える。いわゆる「2025年問題」の始まりだ。
たくさんの問題が指摘されているが、私たちは一つずつ丁寧に向き合っていかねばならない。

PAGE TOP