Top WORKS D社滋賀県商業施設
Works

D社滋賀県商業施設

ディスカウント大手企業からご依頼をうけた既存商業施設の大規模改装工事。
敷地向かいには2027年に世界遺産登録を目指す国宝「彦根城」があり、まちをあげて城下町景観形成に取り組んでいる。
依頼された建物は所謂ショッピングモールの中にあり、既存建物であることから建築計画としての新たな景観形成は難しい。
そこで事業主のラインナップとしては恐らく初めてであろう墨灰色の外壁、彦根藩井伊家の井の字家紋や、甲冑から取り出してきた燻し金色・朱漆赤色を用いて、お客様がイメージする当該店舗と世界遺産登録景観への協調・協力を模索する改装工事となった。

世界遺産観光と常時雇用・ハレとケ

世界遺産登録と聞いてどのようなイメージを持つだろうか。千客万来、経済的発展、雇用の増大、など、「善」のイメージは尽きない。
2024年1月1日現在で世界遺産登録は1199件、うち日本には25件の登録がある。
その中には広島原爆ドームや長崎熊本キリシタンへの弾圧など、実は負の遺産も含まれている。
世界で見ればポーランドのアウシュビッツなども世界遺産である。

観光収入で潤い、誇りのブランドエリアになる、というイメージだけで、観光ツールのように考えてしまいがちな世界遺産登録だが、そうではない。
自然遺産は除いて、後世に人類の所業を示すための世界的な仕組み、と考えれば少し分かり易いだろうか。

善良なイメージだけで世界遺産登録に商業建築コンセプトを合わせてしまうのは、訪れてくる世界の人々からすれば違和感を招いてしまうだろう。
世界遺産登録で手に入る観光効果はあくまで「ハレ」であり、事業主やその代理人である私たちにとってもっとも大事なのは、地元の雇用増大や物価高騰に少しでも足しになるよう、
ディスカウント業としてそれぞれがお客様への努力をし続ける「ケ」だ。

勇壮で知られる井伊家の赤備えと呼ばれる甲冑。華麗と言っていい金色の大天衝(おおてんつき)には目を見張る

  • 武家屋敷らしい雄々しい姿を見せる旧池田屋敷長屋門(市指定文化財)

  • 炎天下のなかで鵜や白鳥も泳ぐ美しいエメラルド色のお堀

  • 井の字モチーフと武家屋敷のカラーテイスト

  • 井の字モチーフと美しいお堀のカラーテイスト

  • 墨色と朱漆色でのカラースキーム

UNESCO World Heritage

そもそも、世界遺産(「顕著な普遍的価値」を有する文化遺産や自然遺産など)の登録を目指す、とはどのようなことでしょうか。
以下が10の登録基準とのこと。 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1.人類の創造的才能を表現する傑作。
2.ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
3.現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
4.人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
5.ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
6.顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの。
7.ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
8.地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
9.陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
10.生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

改めていかがでしょう、、そう、、、改装工事程度では本質の遺産登録には協力できる次元にないのですね。
でも私たちは城や周囲を歩き回り、当時から続いてきたであろう一つ一つの色や形、周りの方々の景観への取り組みを注視し、「ハレ」としてこのお店に採用できるものを拾い出しています。

PAGE TOP